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日経新聞 入場者は減っているのにゴルフ場は増え続けている -抜粋-

2001年1月31日(水)
2000 1/28 日本経済新聞 朝刊 -抜粋-
□入場者減、預託金・・・課題山積でも・・・□
■入場者は減っているのにゴルフ場は増え続けている■
民事再生法による処理が相次ぎ、預託金の大量償還をはじめ難題が山積みのゴルフ場経営だが、以外にもクローズ(閉鎖)されるゴルフ場の例はほとんどない。土地の使い道がないいった構造要因もあるが、外資が買収に名乗りを上げたり、会員主導の新たな方式でさいスタートするなど、必ず引き受けてが現れる不思議な現象が起きているというのだ。
「ないものは返えせません」。ゴルフ場経営に詳しいある弁護士は最近、経営者のこんな開き直りを聞いても驚かなくなったと苦笑する。
2001年は、ゴルフ場がバブル経済期に会員から集めた預託金の償還金額が、推定1兆4千億円とピークに達する。
日本特有の預託金制度では、ゴルフ場を建設する際、10年などの年限を定めて会員から岡年を集めて初期投資に充て、据置期間の後にもとめられれば返す。会員はその代わりに優先的なプレー権を得る。ところが、右肩上がりの経済を前提にしていたゴルフ場の多くは、バブルの崩壊で目算が狂った。預託金を建築費や他の事業に使ったまま、返還に応じる手元資金を欠いているのだ。
返還できない場合、ゴルフ場は償還期限の延長や分割払いなどを会員と話し合うことになるが、合意できなければ経営破たんにつながっていく。百億円を越す負債を抱えるコースが珍しくないなか、債権手続きが簡易な民事再生法が2000年4月に施行され、時価会計の徹底で、上場企業もゴルフ場子会社の整理を加速させる可能性がある。
●買い手として外資系が名乗り●
これだけ見れば、ゴルフ場の淘汰(とうた)が進み、供給過多解消への条件が整いつつあるかに思える。
ところが意外にも「実際に閉鎖されるゴルフ場の例はきわめて少ない」(隆籏貞夫・日本ゴルフ場経営総合研究所専務理事)という。日本ゴルフ場事業協会によると、税収からみて99年に営業活動をやめたゴルフ場は全国で7ヶ所のみ。
今なお新規開業するところもあって、数は2千4百ヶ所近くに達した。
ゴルフ場の数が減らない構造的な要因として、2点が指摘されている。
まず、閉鎖後のコースの使い道が容易には見つかりにくい事。
土砂崩れなどの災害防止策を講じ、山野に戻すにも多額の費用がかかる。プレーを続けたい会員側の事情もある。
もしクローズとなれば預託金返還が危うい上に、プレーさえ続けられない。そこで会員の大半が償還期限の延長などに渋々応じ、せめてプレー権を確保しようとする。
経営側にも、日銭が入る営業を続けたほうが得との判断が働く。
いわばゴルフ場を閉鎖できない消極的理由だが、数が減らない裏にはもう一つ、「必ず引き受ける人が出て来る」という側面がある。
ゴルフ場の新たな買い手として脚光を浴びているのが外資系だ。
米東司ファンドのローンスターは2000年9月、伊藤忠商亊の子会社からフォレスト三木ゴルフ倶楽部(兵庫県三木市)の株式を取得した。
外資による初の買収成立と見られる。
また、ある外資系の銀行は、ゴルフ場の合併・買収(M&A)を手がける専任者を2人置いた。「日本人には不良資産のように見える都心の土地やビルを、外資が次々に買い上げたのと同じ構図が、ゴルフ場でもできつつある」と担当者は明かす。
整理回収機構は、破たんした複数の金融機関からゴルフ場関連の債権を約170ヶ所分、数億円引き継いだ。これからを順次売却して回収しを急ぐ方針で、「外資は有力な売却先の一つ」とみて交渉を進めている。
すでに茨城県のゴルフ場関連の債権を米系ファンドに売却する見込みが立ったという。
米欧などで320ヶ所の経営にかかわるアメリカン・ゴルフ・コーポレーション(米カリフォルニア州)も2000年秋、日本に本格進出を果した。
村島敏充在日代表は「所有・運営受託・リースの三方式を用い、将来は30から50ヶ所を運営したい」と語る。
調査チームを何度も派遣して分析した結果、「日本のゴルフ場経営の改善余地は大きく、運営ビジネスに魅力がある」との結論に達した。
●再生活用で会員自ら再建●
国内のリゾート会社も解手を伸ばしている。ミサワホームグループのミサワリゾートは北武蔵カントリークラブ(埼玉県児玉町)の経営を一年で単年度黒字にした。旧日本長期信用銀行系列の経営だったが、同行の破たんに伴い、運営に切り替えた。「予算にメリハリをつけて営業活動やコース整備に金をかける一方で、従業員の大半を契約社員に変えて人件費を減らした」(星野幸男取締役)会員が主導する形で、破たんしたゴルフ場を再生させた例もある。
92年に運営会社が破産した旧・東相模ゴルフクラブ(山梨県上原町)では、会員による「メンバーの会」が結成され、大口債券者が申請した競売の実行を阻止した。
その後、債権者のメ-ンバンクのあさひ銀行とも協議を重ねたうえ、「上野原カントリークラブ」として99年に再出発した。新ゴルフ場が預託金(145万円)に第一抵当権を付けて価格を高めたのは、「業界では画期的」(会員権業者)とされる。
理事会にも会員代表が5人代わり、運営のチェック機能を果たす。
メンバーの会で中核的な役割を果たし、クラブの理事に就任した高橋克郎氏は「7年がかりだったが、愛着のあるゴルフ場を会員の団結と行動力で健全な姿に戻し、維持して生ける仕組みを作れた」と振り返る。
ただ、長い年月がかかる会員主導の再生例がどこのゴルフ場でも可能とは限らない。
その点、民事再生法は「ゴルフ場再生法」の異名もあり、預託金返還で首の回らなくなったゴルフ場の再生手続きを迅速にする手段として関係者の期待は高い。
帝国データ-バンクによると、ゴルフ場関連した民事再生法の申請件数はこれまでに25件。
「様々な考え方の会員がいるので、債権者と経営側の話し合いをまとめるのは難しい。裁判所のもとで短い期間に意見を集約していく民事再生法はゴルフ場の再生・処理になじみやすい」と西村邦彦弁護士は言う。
同朋債権者である会員側が申請する事も可能だ。
兵庫県社町のサロンロイヤルゴルフクラブでは、昨年3月の社長死亡後、経営不在が続いたため、会員たちが同年5月に民事再生法を申請した。
会員たちの狙いは第3者に乗っ取られてる前にゴルフ場買い取り、首主運営の形に移行することだ。
北海道長沼町は、自治体自らがゴルフ場経営に乗り出すケースとして注目されている。
「マオイゴルフリゾート」を子会社で経営していた住友商亊が、リストラの一環で同町にゴルフ場を無償譲渡したのだ。
以前はメンバー制だったが、雪解けの4月を持ってパブリックコースとして再生する。
「負担のない形で引き継ぜたので、料金をできるだけ抑え多くの人にゴルフを楽しんでもらいたい」(乙坂武・町総務課長)
●徹退が少なく供給過剰続く●
これらゴルフ場再生の試みに共通しているのが、より利用者の視点に立った見直しであることだ。
利用者が望まない過剰な施設・サービスを省くことでプレー料金を安くし、会員主導の合理的な預託制度やパブリック方式による運営をめざす。
高額な会員権、法人向けの料金ためにゴルフというスポーツを敬遠してきた市民には、歓迎すべき傾向だ。
ただ、こうした改革ですべてのゴルフ場が救われるわけではない。
「再生の見通しがないゴルフ場が淘汰されていかなことには、業界全体が低迷から抜け出せない」(日本ゴルフ関連団体協議会の片桐達浩常任理事)。
全体の需要のパイが増えず、クローズするゴルフ場もない。
供給過剰の解消はますます遠のくというジレンマを抱えたまま、ゴルフ場経営の模索は続く。(スクープ取材班)